2006/10/15

今回はハリウッド映画にやられました。何も超大作だけが
ハリウッド映画じゃないですよ!

サンキュー・スモーキング  監督:ジェイソン・ライトマン  出演:アーロン・エッカート、ロバート・デュバル
Thank You For Smoking  2006年 アメリカ映画
今週のイチ押し:ニック・ネイラー=ボクはタバコ協会ロビイスト集団の広報部長。日に1200人もの人を殺すタバコ業界の顔として給料を貰っている。ボクの得意なのは『情報操作』。口八丁手八丁でとにかく相手を言い丸める。強い相手には話題をすり替え、とっさに民衆を見方にする手腕も持っているが、どれも強い根拠がある訳ではなく、その場その場の対応力が勝負だ。しかも、ボクはアルコール業界のポリーと銃製造業会のボビーが親友。3人はMOD(Merchant Of Death)だと認識している。ボクには12歳になる息子がいる。今は離婚した妻と暮らしているが彼にはボクの事をもっと知ってもらいたい。仕事柄僕の周りには敵が多い。中でも嫌煙活動に躍起になっているフィニスター上院議員は目の上のたんこぶ。彼はタバコのパッケージにドクロマークを付ける提案をしている。このままではタバコのイメージは落ちる一方。そこでボクが提案したのは??・・
私評:もし、君の息子が18歳になったらタバコを吸わせるのか??・・・・すごい映画に出会った。最近のハリウッド映画には珍しい(?)シナリオと役者の演技がメインのセンスの良い映画です。まずは、とにかくシナリオが良い。情報操作の帝王があの手この手で人々を煙に巻いていく。そしてそんな父親に惹かれていく息子。しかし、とんでもない罠が彼を待ち受けているのです。それを言ってしまう訳にはいきませんが、「やっぱり・・!」という感じ。そして彼の巻き返しには「なるほど!」というオチが待っています。約90分の映画ですが、とにかく内容が濃いです。笑いすぎてお腹が痛くなります。だけど、しっかりとしたテーマが終始作品に流れています。主演はアーロン・エッカート。彼の演技は最高です!彼の息子役は天才子役キャメロン・ブライト。アルコール業界のPRウーマン役は「ワールド・トレードセンター」のマリア・ベロ。肺ガンの初代マルボロマンにはサム・エリオット。アジアかぶれのスパーエージェントにお久しぶりのロブ・ロウ。タバコ業界の黒幕をロバート・デュバル。タバコが嫌いな上院議員にウィリアム・H・メイシー。そして見事なオッパイでニックを惑わす記者役にはケイト・ホルムズ。監督は「ゴーストバスターズ」の名監督アイバン・ライトマンの息子、ジェイソン・ライトマンです。
ブラック・ダリア  監督:ブライアン・デ・パルマ  出演:ジョシュ・ハートネット、アーロン・エッカート
The Black Dahlia  2006年 アメリカ映画
今週のイチ押し:1946年、LA。市警に勤めるバッキーはメキシコ人と水兵の暴動でリーと出会う。リーは出世コースを歩む刑事で元ボクサー。バッキーも元ボクサーという事もあり、拳闘好きの地方検事補の提案でPRのためのボクシング試合を行う。しかし、バッキーは金を稼ぐためリーに金を賭けわざと試合には負けた。しかし、この試合の思わぬ余禄として特捜課に昇進し、リーとチームを組む事に。リーには同棲しているケイという美しい女がいた。バッキーはいけないと知りながら彼女に惹かれていく。そんなある日、ふたりは凶悪犯の張り込み中に銃撃戦に巻き込まれるバッキーはリーに助けられるがタレこみ屋のフィッチは殺されてしまう。その銃撃戦の建物の向こうに無残な死体が転がっていた。腰から下が切断され、口が耳まで裂かれた女の死体だった。リーは担当外であるのにこの事件に異常なまでの執着をみせる。やがて死体の身元が判明する。彼女は女優を目指していたがチャンスが掴めず娼婦まがいの事をしていたという・・
私評:あなたには撃てないわ。臆病者・・・ジェイムズ・エルロイの傑作小説が映画化された。しかも、監督はブライアン・デ・パルマ。私はかなり前にこの小説を読んだのですが、その時の頭に描いたイメージがまさにデ・パルマの映像だったのです。今回スクリーンで見て、その時のイメージに狂いはなかったと確信しました。とにかく映像が凝っています。特にカメラワークは最高です。そして原作の面白さを余すところなくギッシリと映画に詰め込み、まさにパズルのようにバラバラに散りばめられた事件を寄せ集め、最後に見事にひとつの作品としてまとめあげている。上映時間2時間1分。まったく気が抜けませんよ。主演はまさに原作のバッキーのイメージだったジョシュ・ハートネット。そしてリー役は「サンキュー・スモーキング」のアーロン・エッカート。どちらの彼も素晴らしいのですが、全然違うキャラクターです。そしてひと際美しいケイ役はハリウッドの華スカーレット・ヨハンソン。事件の鍵を握る富豪の娘役はオスカー女優ヒラリー・スワンク(今回はしっかり“女性”の役でした)。そして印象的だったのはフィオナ・ショウ。ハリー・ポッターシリーズの意地悪な叔母役で有名な彼女ですが、この映画のぶち切れた演技は強烈でした。この映画はまさにフィルム・ノワール。面白かったです!!
カポーティ  監督:ベネット・ミラー  出演:フィリップ・シーモア・ホフマン、キャサリン・キーナー
Capote  2005年 アメリカ映画
1959年、カンザス州ホルカム。一人の少女が友人宅を訪ねた。そこで彼女が見たものは・・。翌日のNY。「ティファニーで朝食を」で名声を博したトゥルーマン・カポーティは新聞記事に目を留めた。カンザス州の富農一家4人の惨殺事件。カポーティはこの事件について書きたいという欲求に駆られニューヨーカー誌の編集長ショーンに電話を入れ、許可を得た。カポーティは彼の良き理解者でもあり幼馴染のネル・ハーパー・リーを旅の供に、カンザスを目指した。カンザスで警察の記者会見に出たカポーティは捜査部長のアルヴィンと出会う。お堅い仕事人のアルヴィンは同性愛者で変わった身なりのカポーティを受けいれなかったが、彼の妻がカポーティの小説のファンである事から、繋がりを持つことができた。年末も押し迫った12月30日に事件は大きな転機を迎える。容疑者のふたりが逮捕されたのだ。その中の一人ペリーにカポーティは強く惹かれた。そしてペリーの信頼を得たが、彼への判決は死刑。ペリーは死刑囚官房へと移される・・・
私評:あの日に起きたこと、全てが知りたい・・・私がカポーティ作品と出会ったのは高校時代。当時から本が好きだった私に(なぜか)数学の先生が推薦してくれたのが「冷血」だった。この時先生が言った言葉をよく憶えています。「カポーティは会話の94%を覚えている天才。そんな彼だから書くことができたノンフィクション・ノベルだ」。このセリフは映画の中でも語られている。そして冷血に描かれていた克明な調査報告書のような文章に私は惹きつけられ一気に読破した。あれから二十数年が経ち、ふたたび私はカポーティと出会った。しかも、映画で。風貌などはこの映画の予告編を見るまで、まったく知らなかったのですがある意味チャーミングな存在。そして彼がどんな思いでペニーと接し、「冷血」を書き上げたのかを知りました。もちろん、同性愛者であったことも大きな要因かもしれません。しかし、彼の持つ凄まじいまでの探究心が「人を殺すに至る」までの心理に異常なまでの好奇心を抱かせたのでしょうね??私が映画を見た恵比寿ガーデンシネマでは休憩時間にカポーティの生の声をBGMで流していました。それは映画の中のフィリップ・シーモア・ホフマンにそっくり。(本当は逆なんですけどね)。フィリップはこの作品で今年のオスカーを受賞。それも納得の演技です。ネル役はこんな地味な格好でもステキなキャサリン・キーナー、そして捜査部長役はクリス・クーパー。しかし、彼ら以上に印象的だったのがペリーを演じるクリフトン・コリンズ・JR。今後が期待できる役者です。監督はこの映画が長編デビューとなるベネット・ミラー。
16ブロック  監督:リチャード・ドナー  出演:ブルース・ウィリス、デヴィッド・モース
16 Blocks  2006年 アメリカ映画

夜明けまでの張り込みを終えた初老の刑事ジャック・モーズリーは、アル中寸前のダメ刑事。家に帰ろうとする彼を上司が引きとめ任務を与えた。それは囚人のエディを16ブロック向こうの裁判所まで10時までに送り届ける事。それは15分もあれば終わるはずだった。8時11分、エディを乗せてジャックは車を走らせた。おしゃべりなエディに苛立ち、車を止めたジャックは酒屋に立ち寄りスコッチのボトルを手に入れた。しかし、外に出てみるとエディに銃を向けている男が・・。とっさに男を狙撃したジャックはエディを連れてその場から走り去り身を潜めた。応援を要請したジャックのところに元パートナーのフランクがやってくる。彼の相棒のジェリーを見てエディは黙り込む。不審を抱くジャックにフランクは「エディはマズい現場を見ている」と説明した。そう、エディが証言しようとしていたのは警官たちの暴力行為だったのだ。フランクはエディをこの場で殺害しようとするが、ジャックはエディを連れてその場を逃げ出した・・・・

私評:これは吉兆さ。きっと・・・ブルース・ウィリスも齢を重ね、もはや『ダイハードマン』ではなくなってしまった。かつては・・という肩書きがあるのだけれど、酒に溺れ、気力を失くしている。『人生は長すぎる』なんてセリフを吐く男。しかし、そんな役も見事にこなすブルース・ウィリスは演技派の俳優ですね。この映画の面白さのひとつはNYのチャイナタウンなどの雑踏の中で撮影が行われている事。まさにゲリラ的というのがピッタリの現場だったでしょうね。また、そんな撮影を可能にしているのが綿密なシナリオです。分刻みで刻々と変わっていく状況の中で、ジャックはどうやって脱出を試みるのか??最後の最後までドキドキできますよ。エディ役はモス・デフ。彼は決して上手い役者だとは思わないのですが、ラストの彼の笑顔の写真が大好きです。悪徳警官役は(本来は善人が似合う)デヴィッド・モース。彼ってブルース・ウィリスより年上なのですね・・。監督は娯楽映画の帝王(?)「リーサル・ウェポン」のリチャード・ドナー。
地獄の変異  監督:ブルース・ハント  出演:コール・ハウザー、パイパー・ペラーボ

The Cave

 2005年 アメリカ映画

1970年代、冷戦時代のルーマニア。カルパチア山脈の古い修道院にとレジャーハンターが訪れる。目当てはテンプル騎士団が隠したとされる財宝。しかし、彼らは大きな落盤事故で建物ごと消えてしまう。そして現在。地質学者のニコライはカルパチア山脈の地下に145kmにも連なる水脈を発見したのだ。その大きさは地球最大規模。さっそく洞窟内の調査と生命体のサンプル採取のために各界のプロが集められた。シャークと呼ばれるダイバーチームもそのひとつ。リーダーのジャックは沈着冷静なプロフェッショナル。彼の一行は新しいアドベンチャーを求め、ニコライの依頼を二つ返事で引き受けた。洞窟内の広いスペースにキャンプを構えた彼らはテンプル騎士団を滅ぼした翼を持った悪魔の伝説を持つケーヴへと足を踏み入れた。深い洞窟を潜って渡った一行の前に謎の怪物が現れる。そして引き起こされた爆発事故で、彼らは退路を断たれてしまう。前に進むしかなくなった一行をふたたび怪物が襲う。しかも、彼らには強い感染能力があった・・・・

私評:地球の底は底知れない・・・あの「川口探検隊」をパクッた予告編といい、巨大電気ウナギ、無数の白サソリなどいかにもB級の臭いをプンプンさせるこの映画ですが、こういう映画が好きなんです。先日見た「ディセント」同様、人類未踏の洞窟に入り込んだ人間たちが未知の生物に遭遇するのですが、『ディセント』に比べ『地獄の変異』はフル装備で、しかも男が多いところが違いますね。どちらが良かったかと比較してしまうと『ディセント』になってしまうのですが、この作品はハリウッドらしくそれなりのバジェットを注ぎ込んだ作品です。特殊メイクなんかもかなり凝っているし・・。何かが感染して瞳が星型になるところは笑えました。主演はあまりオーラを感じないコール・ハウザー。そして主役ではないけど、一番ネームバリュウがあるので日本のチラシの一番上に名前がある「コヨーテ・アグリー」のパイパー・ペラーボも大活躍をします。もうひとり気になったのがカメラマン役の韓国人、ダニエル・デイ・キム。彼は「LOST」では英語が話せない設定なのに・・(笑)。監督は「マトリックス」等の特撮監督を手がけたブルース・ハント。

チャーミング・ガール  監督:イ・ヨンギ  出演:キム・ジス、ファン・ジョンミン
The Charming Girl  2005年 韓国映画
郵便局に勤めるチョンヘは29歳の独身。彼氏も今はいない。仕事はキッチリとこなす。同僚とも適当に付き合いはするが一線は越えない。観葉植物の手入れを欠かさない。通販でキムチを買ったりする。そんなある日、彼女はマンションの下で子猫を見つける。一大決心で猫を買う事にした彼女だったが、猫はなかなか懐かずソファの下から出てこない。しかし、猫を見ていると彼女が大好きだった母親の事を思い出してしまう。そして忌まわしい事件も・・。そんな彼女にも気になる男がいた。作家志望らしいシャイな青年。ある日、彼女は彼を食事に誘った。食材を買い入れ彼のための料理を作る。しかし、彼はとうとう現れなかった。翌日、通りの向こうに彼を見つけるが、チョンヘは彼を無視した・・・
私評:もう一度、いいですか??・・・この映画は主演のほとんどがキム・ジスのひとり芝居。しかも、淡々としていて表情も変えない。ただ、毎日を決められた事のようにこなしている。そんな彼女の日常に母親との事、そして少女時代の忌まわしい事件がフラッシュバックのように挿入される。今の彼女が、なぜこういうキャラクターなのかが徐々に見えてくるのです。そして最後は堰を切ったように彼女の感情が爆発する。しかし・・・?? しかし、淡々とした日常を描くだけでこれほどまでに不思議な感慨を与えられたのはなぜでしょう?一番の理由は主演のキム・ジスの不思議な美しさです。媚びた笑顔もなければ、オシャレでもない。映画の中では何も飾らないスッピンの女なのですが、それが妙にセクシーなのです。そしてまるで小津安二郎の映画のようにじっと日常を見つめるカメラ。そんな無機質な日常と耐えがたいほどの屈辱の過去が交差する時、物語は静かに動き出そうとするのです。眠い時にこの映画を見たら、速攻で熟睡できるでしょう。でも、最後まで観終えた時に心にはなんだか訳が分からないけど「希望」のような物が湧いてきます。監督は第2のキム・ギドクと呼ばれているらしいイ・ユンギ。ギトクと比較するのはどうなんでしょう??
オトシモノ  監督:古澤健  出演:沢尻エリカ、若槻千夏、小栗旬
 2006年 日本映画
高校生の奈々は母親が突然入院してしまい、小学生の妹範子とふたりで暮らしている。いつもの通りふたりが通学途中、範子の友達の孝と出会う。彼は「定期を拾ったから、ボク死ぬんだって・・」と謎の言葉を残し行方不明になってしまう。そして数日後、範子も定期を拾う。翌日に駅に届けると、なんと範子も行方不明になってしまう。奈々は範子を探すため必死に手掛かりを探す。そして駅の忘れ物台帳を調べると孝も範子もきちんと駅に届け出ていた。しかも、定期の持ち主の名前はなぜか同じ名前。奈々のクラスメートの香苗は仲間と釣るんでいる一見不良娘。そんなある日、香苗はBFの茂からブレスレットをプレゼントされる。しかし、そのブレスレットは電車の中で茂が拾ったオトシモノだったのだ。しかも、ブレスレットは外れなくなってしまう。しかも、BFの茂は地下鉄に惹かれて死んでしまう。友達は香苗のそばを去っていくが、奈々だけは香苗のそばにいた。そしてふたりの間には硬い友情が芽生えるが・・・・
私評:返して〜、返して〜!!・・・・日本よりも先に韓国で公開されてちょっと話題になった作品。しかも、ホラーだし、主演が沢尻エリカとくれば見ないわけにはいかないでしょう!正直、めちゃ面白い!という作品ではありませんでした。しかし、ホラー映画ならではのドキドキさせる演出が随所にあったので、けっこう楽しめました。しかも、怖がっているのが沢尻エリカですからね!あとは、惨劇の舞台や怪しい黒ずくめの女のキャラが出てくるのが地下鉄のホームなのが良い。けっこう日常で使う場所なので、そこに恐怖があるなんて、ドキドキしませんか??主演は出演作が目白押しの沢尻エリカ。しかし、この作品で彼女は初主演なのです。そして香苗役はバラエティで人気者の若槻千夏。彼女がけっこう良い演技を見せるんですよ。そして地下鉄職員の小栗旬は冴えなかったな〜・・。逆にちょっとしか出てこない片目の杉本彩や、お母さん役の浅田美代子の方が印象的でした。ラスト近くのゾンビの大群は笑えた・・・。監督は古澤健。


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