2011/8/21

今回は強烈なインパクトの2作品に出会いました。
ホラー映画の枠を超えた感動作と、実話に基づく悲劇・・

モールス  監督:マット・リーヴス  出演:クロエ・グレース・モリッツ、コディ・スミット=マクフィー
Let Me In  2010年 アメリカ映画
今週のイチ押し:雪深い田舎町に暮らすオーウェンはいじめられっ子。孤独なオーウェンは自分の部屋から望遠鏡で近所を覗き見るのが趣味。そんなある日、彼の住むアパートに一人の少女が移って来る。雪の中でも裸足の少女の名はアビー。その日もオーウェンはひとりでアパートの前のジャングルジムにいた。そこにアビーが現れ、ふたりは初めて会話を交わした。不思議な雰囲気を持つアビーに、オーウェンは淡い思いを抱いた。そしてアビーはいじめられているオーウェンに仕返しをする事を促した。アビーが越してきてから、アパートの周辺で殺人事件が起こりはじめる。被害者は一様に、血を抜き取られていた。事件とアビーの関連を察知したオーウェンは、彼女に問いかける。「君はヴァンパイアなの?」事件を追っていた刑事は、凍った湖から発見された死体から、アビーのいるアパートへと辿り着く。しかも、同じアパートの女性も首を裂かれ、日の光の元で発火し非業の死を遂げていた。アビーの部屋へと足を踏み入れる刑事。しかし、その部屋に隠れていたのはオーウェンだった・・
私評:私を招き入れて・・・この作品はホラー映画の傑作「ぼくのエリ 200歳の少女」のリメイク。オリジナル版が大好きな私はリメイクにはちょっと懐疑的だったのですが、こちらも素晴らしいできの映画でした。この作品はいわゆるホラー映画というジャンルだけでは括る事はできない。ストーリーのメインに置かれているのは、孤独な少年とヴァンパイアの少女のピュアなラブストーリーなのです。それはピュアであるがゆえに、残酷でもあるのです。殺人のシーンとかはかなり残酷なので、R15になっていますが、本来はこの作品の主人公たちと同じくらいの年齢の少年少女が見るべき映画だと思います。とにかく感動してしまった・・・。アビーを演じるのは「キック・アス」のぶっ飛び演技で私のハートを鷲掴みにしたクロエ・グレース・モリッツちゃん。この映画のアビー役もまた、彼女の代表作となるのでは??オーウェンを演じるのは「ザ・ロード」のコディ・スミット=マクフィー君。彼の演技も素晴らしい!というか、あの寂しげな雰囲気は天性のものでしょうね。監督は「クローバーフィールド/HAKAISHA」のマット・リーヴス。
黄色い星の子供たち  監督:ローズ・ボッシュ  出演:メラニー・ロラン、ジャン・レノ
La Rafle  2011年 フランス・ドイツ・ハンガリー映画
今週のイチ押し:1942年、第2次世界大戦時のパリ。ナチスの支配下にあったフランスでも、ユダヤ人迫害の魔の手が伸びようとしていた。すでに、ユダヤ人は衣服の胸に黄色い星を付ける事を義務付けられ、差別されていた。そしてついにヒトラーの命令が下り、フランス政府はパリに住む外国籍のユダヤ人、24000人を引き渡す事になった。ドイツ側では子供は除外するよう提案するが、交渉の窓口であるラヴァル首相は、これを拒否。多くの孤児の面倒を見る事は出来ないという判断だった。そしてついに運命の日716日が訪れる。早朝、フランス兵はユダヤ人の検挙に乗り出した。その日のうちに検挙された13000人のユダヤ人は競輪場へと収容された。水も食料もなく、衛生面でも劣悪な環境の中に、看護師のアネットが派遣される。数千人にもなる患者たちに対して、医師と看護師はたったの6人。アネットは不眠不休で働き続けた。数日後、ユダヤ人たちは違う収容所へと移送される。しかし、そこはさらにひどい環境だった。そんな彼らを支えていたのは家族の愛。しかし、その絆までも引き裂かれようとしていた・・
私評:生きるのよ!!何があっても・・・・これは実際にあった話なのですが、1995年までフランス政府はこの事実を認めず隠し続けていたそうです。ナチスによるユダヤ人の迫害の映画は数多く観ましたが、この作品も強烈なインパクトでした。実際に数万人が殺害されたらしいのですが、この映画の中では殺害シーンは描かれていない。しかし、死の航路を歩むユダヤ人たちの後ろ姿を見るだけで、彼らが2度と帰っては来ないと分かります。引き裂かれた家族、そして幼い子供たちも・・・。あまりの悲惨な状況に泣けてきました。こういう映画をみんなが観て、同じ間違いを繰り返さないようにしたいものです。そして今の我々がいかに恵まれているかも認識すべきかも??しかし、そんな作品の中に、心温まるエピソードも・・・。アネットを演じるのは「イングロリアス・バスターズ」「オーケストラ」のメラニー・ロラン。彼女がどんどん痩せ細って行くのはCGじゃないですよね。ユダヤ人として捕らわれながら、多くの人々を救った医師役は「レオン」のジャン・レノ。しかし、この映画で私の目を捕らえて離さなかったのは、子供たち無垢な彼らが、あんな残酷な運命を辿るとは。それを想像するだけで涙が出ます。監督はローズ・ボッシュ。
ツリー・オブ・ライフ  監督:テレンス・マリック  出演:ブラッド・ピット、ショーン・ペン
The Tree Of Life  2011年 アメリカ映画
ある日、オブライエン家に訃報が届く。その家の二男R.L.の死はあまりに早すぎた・・。それから数十年後、オブライエン家の長男のジャックは仕事では成功をおさめ豪邸に住んでいるが、夫婦仲は完全に冷え切っていた。しかし、ジャックはいまだに弟の死がトラウマになっている。そして少年時代の父親との確執が・・・。1950年代。オブライエン夫妻の元に小さな命が誕生した。その小さな体のパーツを愛おしく見つめる父親。幼少時代のジャックは両親の愛に包まれすくすくと育って行った。自分の周りの全ての物が彼を包み、そしてそれらはジャックの成長を促した。やがて、弟のR.L.が産まれた、そして3男のスティーブも産まれ、オブライエン家は家族としての幹を太くしていった。しかし、息子たちが成長すると父親は息子たちに厳しい態度を示すようになった。善良な人間は利用される。男が人生で必要なものは「力」だと教え諭す。ところがジャックはそんな父親に対して、いつしか反抗心を抱いていく・・・・
私評:父さん、母さん、ぼくの中でふたりが争っている・・・この映画のストーリーは上記に書いた至極単純な家族の物語。しかし、作品の中で語られているのはもっと壮大な“生命”の叙事詩。それらを美しくも抽象的な表現で、映像だけで私たちの問いかけてくる作品です。それゆえにか、答えが出ないまま、なんとも不思議なシーンで映画はエンドクレジットに入ります。正直、私にはよく分からない作品でした。そして、とても宗教色も強い作品だとも言えると思います。映画の途中で、突然宇宙の映像や、細胞分裂の映像・・と地球の進化を描くシーンが登場するのですが、それはまるでスタンリー・キューブリックの「2001年宇宙の旅」。しかし、この映画をどう捉えれば良いのかが、正直、私には分かりません。もしかして、変な洗脳をされていたのかも???父親役は「イングロリアス・バスターズ」のブラッド・ピット。彼が偏執的なまでに息子に厳しい父親を怪演。そして成長した息子のジャックを演じるのが「ギター弾きの恋」のショーン・ペン。母親役はTVシリーズを中心に活躍するジェシカ・チャスティン。そして素晴らしいのが新人の3人の息子たち。特に長男を演じたハンター・マクラケン君は絶品です。監督は「天国の日々」「シン・レッド・ライン」のテレンス・マリック。正直、彼の作品は苦手かも・・・
オープン・ウォーター 赤い珊瑚礁  監督:アンドリュー・トラウキ  出演:ゾー・ネイラー、エイドリアン・ピカリング
REEF  2010年 オーストラリア映画
世界中に船舶を届ける仕事をしているルークは、豪華ヨットのクルージングに友人のマットと恋人のスージー、そしてマットの妹で、かつてルークの恋人だったケイトを呼びよせた。彼らは観光客など訪れない穴場の無人島で、しばしバカンスを楽しんだ。しかし、その夜にヨットは暗礁に激突し転覆してしまう。しかも、潮流の影響で逆さになったヨットは沖へと流されていく。ヨットは沈んでしまうと判断したルークは彼らに近くの島まで泳ぐ事を提案する。ルークの先導で4人はゆっくりと泳ぎ始める。しかし、そこにはさらなる恐怖が彼らを待ち受けていた。波間に巨大な三角の背びれが見え隠れし始める。そこにいたのは巨大なホオジロザメだった。一度は、姿を消したサメだったが流されたビート板を拾いに行ったマットが、突如襲われる。足を失ったマットは出血多量で死んでしまう。しかし、残された3人に、悲しみに浸っている暇はなかった。夜を迎え、暗黒の闇の中で彼らは朝を待った。しかし、彼らのあとを“ヤツ”は追ってきていた・・・・・
私評:こんな北の方までサメは来るんだぜ・・・・タイトルに「オープン・ウォーター」と付いていますが、続編ではありません。原題も「REEF」なので、無理やりこじつけたんですね。しかし、共通点はこの作品も実話であるという事。海外の海で泳ごうなんて考えない方が良いかも??この映画はローバジェットのB級作品。サメもほとんど姿を見せず、CG処理をしている箇所も数えるほど。それゆえにか、こういう映画を見なれている私に、ドキドキ感は皆無でした・・。役者たちはオーストラリアでローカルに活躍する面子ばかり。唯一、ケイトを演じたエイドリアン・ピカリングは「ノウイング」「シャッター」などのハリウッド作品にも出演しています。監督はアンドリュー・トラウキ。彼の出世作は「ワニ」の映画だそうです。なんとなく、観てみたい気もするのですが・・・。上映館は銀座シネパトスだったのですが、観客は私を入れて3名・・・。やっぱりね・・。


前回の記事も読んでね~!



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