東京国際映画祭 特別招待作品 & アジアの風


2003/11/1 - 11/9


今年の映画祭の特別招待作品のハリウッド映画はどうも出涸らしみたいな感じが・・・。
まもなく公開される作品も多いし、ゲストも来ないので焦って見る必要はないです。
その代り、日本映画、そして話題の韓国映画は最高レベル。

殺人の追憶  監督:ポン・ジュノ  出演:ソン・ガンホ、キム・サンギョン
Memories Of Murder  2003年 韓国映画
今週のイチ押し:1986年。韓国の田舎町で連続婦女暴行殺人事件が起こる。被害者の女性は犯された上、手足を縛り上げられ、首にはストッキングを巻かれるという無残な姿で発見された。地元の刑事パクは独自の捜査で容疑者を絞り、強引に自白させて犯人に仕立てようとしていた。そこにソウルから一人の刑事、ソがやってくる。彼はパク他、この警察署の逸脱したやり方に不満を抱いた。しかし、そんなやり方がいつまでも通用するはずもなく警察課長は解雇。新しい課長の元でソは自らの意見を述べ、捜査は進展を見せる。全ての事件は雨の日に起きている。被害者は赤い服を着ていた。そして同僚の婦人警官は、事件の日にいつも同じ曲がラジオから流れていたことを指摘する。徐々に犯人を囲い始めたと思ったのもつかの間、またしても被害者が・・・・。
私評:犯人はアソコの毛が生えてない奴だ。つんつるてんの男だ・・・・この物語は韓国で実際に起きた事件がベースになっている。しかし、この映画はとにかく笑いがたくさんあります。ソン・ガンホはこの手の役は得意でしょうが、とにかく全員で笑いをとりに来るのです。話の内容自体は、かなり陰惨でしかも緊迫感が溢れる事件なのですが、監督のこういった演出がこの映画をすごく面白くさせると同時に、登場人物をすごく身近な人間に感じるさせるのです。先日「吠える犬は噛まない」を絶賛した私ですが、この映画を観て「やはりこの監督はただ者ではない!」と確信しました。主演は全然2枚目ではないけど、韓国映画のスターの中では絶大な人気を誇るソン・ガンホ。ちょっと浅はかで、ソウルの刑事にコンプレックスを感じたりするのですが、とにかく人間味溢れるキャラクターです。「上手い!」って感じですね。そしてソ刑事を演じるのはキム・サンギョン。ソン・ガンホとは対極のキャラクターです。彼はハンサムなのでこれからブレイクするでしょう!!とにかくこの映画は素晴らしかったです。
嗤う伊右衛門  監督 :蜷川幸雄  出演:唐沢寿明、小雪、香川照之
Eternal Love  2003年 日本映画
今週のイチ押し:自分の父親の切腹の場で介錯をしたことがトラウマになり、浪人に身を落とした境野伊右衛門。彼は乞食の又市の紹介で婿入りの話を持ちかけられる。武家の民屋家の娘、岩はある病がもとで顔の半分が崩れてしまっていた。しかし、彼女はそんな事にはまったくめげず凛とした態度をとっていた。そんな娘を不憫に思っていた民屋だったが、伊右衛門が婿に入ると、安心したかのように息を引き取ってしまう。伊右衛門と岩は時間が経つにつれ次第にお互いの気持ちを汲み取り、愛し合うようになる。しかし、そんな中睦まじい二人を筆頭与力の伊東は面白くなかった。あらぬ嘘を並べ、二人を別れさせてしまう。一人静かに身を引いた岩は伊東の企みを知り、ショックを受ける・
私評:そなたを醜いと思ったことなど一度もない。そなたは心の美しい女だから・・・京極夏彦の原作を読んでいた私は、だいたいの内容は知っていたのですが映像になるとまた違いますね。こんなに美しくも怖い、そして悲しいラブ・ストーリーはないでしょう!この映画はご存知「四谷怪談」がベースになっているのですが、全然ホラー映画ではありません。本当にピュアなラブ・ストーリーなのです。伊右衛門と岩のあまりに純真な「愛」の姿に私は泣きました。そしてラストシーンで、棺桶の中で抱き合う二人を見て泣きました。この映画の中で小雪は最初から焼け爛れたような顔で登場します。左半分は本当に美しいのですが、右側は醜く崩れているのですが、この役を小雪が演じているところが、また良いと思いました。なんたって今や超人気の美人女優が、特殊メイクですごい顔になっているんですよ。そして寡黙で笑うこともない伊右衛門を演じるのは唐沢寿明。彼の演技も素晴らしい。脇を固めるのは椎名桔平、香川照之、六平直政、池内博之ら。そして監督は「青の炎」の蜷川幸雄です。これは本当に素晴らしい映画です!
ゴジラxモスラxメカゴジラ 東京SOS  監督 :手塚昌明  出演:金子昇、吉岡美穂、小泉博
Godzilla Tokyo SOS  2003年 日本映画
ゴジラとメカゴジラの壮絶な死闘から1年。メカゴジラはいまだ修復が終わらずにいた。整備員の一人中條は、休日を叔父の家で過ごしていた。この叔父の元に、インファント島から来客があった。なんと、モスラを拝める二人の小美人だった。彼女たちはメカゴジラに使われているゴジラの骨は、海に返すべきだという。人間は自然の摂理を無視している。そうしないとあのモスラまでもが人間の敵になりうると・・。窓を開けるとそこにはモスラがいた。一方、太平洋岸では巨大生物が目撃される。ゴジラだ。またしても、ゴジラはメカゴジラの骨に導かれ、修復を行っている八王子基地に向かおうとしていた。そこにモスラが現れ、ゴジラとモスラの壮絶なバトルが開始される。しかし、力に勝るゴジラはモスラを撃退。やむなく、小美人の言葉を裏切りメカゴジラを出撃させることに。一方、小笠原ではモスラの幼虫が2匹生まれ、今まさにバトルの中心となっている東京を目指していた・・・・・
私評:モスラーや、モスラー・・・昨年末に公開された「ゴジラVsメカゴジラ」の正式な続編です。前作のラストで海に帰っていったゴジラ。しかし、ゴジラは旧ゴジラの骨とDNAから作られたメカゴジラを、まだ追っていたのだ。前回、メカゴジラ「機龍」を操り大活躍した釈由美子も、もちろん登場。しかし、今回はアメリカに渡り研修をしてくるという設定なのでバトルには参加せずじまい。でも、まさか画面で見れると思わなかったので、嬉しかったです。今回のゴジラはある意味、今までのシリーズに終止符を打つような展開になっています。それは見てのお楽しみということで・・。しかし、今回も怪獣同士のアクションシーンはすごい。CGもふんだんに使われ、この辺りは言うことなしです。また、人間同士のドラマもうまく盛り込んであって、それが邪魔にならないので良いですね。主演は金子昇、吉岡美穂(彼女はミスキャストでしょう・・・)そして小美人役で「ロボコン」の長澤まさみちゃんが登場。舞台挨拶でもめちゃめちゃ可愛かったです。首相役は前作からの中尾彬。そして中條の叔父役の言語学者に43年前の「モスラ」で主演した小泉博が、同じ役の43年後という設定で登場。これも東宝モンスター映画のファンには嬉しい!やっぱり、映画祭ではこの映画を見ないと・・・。
着信アリ  監督:三池崇史  出演:柴咲コウ、堤真一、吹石一恵
You've Got A Call  2003年 日本映画
女子大生の由美は鍵穴が覗けない。それはある事件がトラウマになっていた。そんなある日、合コンの最中、由美の友人なつみの携帯に電話が掛かってくる。耳慣れない着信音。その電話の発信はなんと自分の電話だった。しかも、着信時刻は3日後。残されていた留守録を聞くと、自分の声が聞こえた。それから3日後、なつみは悲惨な最期を遂げる。しかも、彼女が最後に残した言葉は留守録にあった言葉と同じだった。その他にも、2人の友人が不可思議な死を迎えていた。そしてついに由美の電話に呪いの電話が掛かる。留守電には「なんで・・・?」自分の声が・・・・・・。
私評:病院に連れて行ってあげる・・・・この手のホラー映画はどうしても「リング」と比べてしまうのですが、この作品はちょっと捻りがあって差別化されていました。また、ホラー映画の楽しみの一つである「殺され方」が実にイイです!!特に吹石一恵の死に方なんかサイコー!!痛そうな殺され方はこの映画の見所と言えるかもしれません。しかし、この映画のもうひとつのテーマである「愛」については、ちょっとしょぼい感じがしたのですが、三池監督じゃあ、仕方ないか??また、不気味なキャラが登場するのですが、これはどう見ても「伽椰子」でしょう!!(笑)主演は今、一番旬な女優柴咲コウ。彼女の怖がる演技がめちゃめちゃ良いです。彼女は良い女優になりましたね。ヒーロー役は堤真一です。また、この映画は普通の映画の100倍くらい(大袈裟ですが・・)デカイ音でビックリさせます。こういうのって心臓に良くないよね〜。でも、これは映画館で楽しみたい部分。自宅では絶対にここまでの迫力は出ないからね・・。この映画を見たら、きっと自分の電話番号を非通知に設定したくなるよ・・・。ちなみに私は、この映画の呪いの着信音を自分の電話に入れました。相変わらず、悪趣味な私です・・・
ブルース・オールマイティ 監督:トム・シャドヤク  出演:ジム・キャリー、モーガン・フリーマン
Bruce Almighty  2003年 アメリカ映画
テレビ局のレポーターのブルースは、独特の毒舌が売り。しかし、その日彼はめちゃめちゃついていなかった。狙っていたニュースのアンカーの座を奪われ、車はぶつける、そして恋人と喧嘩・・・。彼は叫んだ「神よ!これは不公平だ。なんでボクだけがこんなに不幸なんだ〜!!」次の日、何者からかブルースのポケベルにメッセージが。その男を訪ねると、なんと彼は「神」だった。神は自分の全ての能力をブルースに授けるので、人々を幸せにしろという。しかし、ブルースはその力は己のためだけに発揮する。仕事は順風満帆になったブルースだったが、ただひとつ恋人だけを逃してしまう。全能の神も人の心を操ることはできないのだ・・・・
私評:B・E・A・U・TIFUL!!!!・・・・しかし、この映画のテーマは、良く使われる内容ではあると思うのですが、もし自分が神様のパワーを持ったら何をするだろうか??この映画のブルースもそうなのですが、大抵は「良いこと」には力を使わないような気がします。感想はというと・・・まさに、ジム・キャリーらしい映画でした。相変わらずめちゃめちゃテンションが高いジム。そしてあの変幻自在な顔の筋肉も健在でした。とにかく彼の映画はスピーディーです。彼の動き、喋りも早いのですが、それに合わせて映画の展開も速い速い・・。それが私には実に気持ちの良いテンポでした。そして逆にのっそりしたモーガン・フリーマンが、良い意味でこの映画にブレーキを掛け一服の清涼剤となっているのです。とにかく笑えるし、特撮のすごさに「お〜!!」と驚かされるし、中盤はちょっとシリアスな気分になったかと思うと、最後にはめちゃ感動!!(ベタではあるのですが・・)私はめちゃめちゃ好きな映画です〜・・。変な駆け引きがないので、素直に楽しめる映画でしょう!家族で見るのも良いですね!!そして恋人役にはブラピの奥さんジェニファー・アニストン。彼女がまた、可愛いんですよ〜。オススメ映画です。 
イン・ザ・カット  監督:ジェーン・カンピオン  出演:メグ・ライアン、ジェニファー・ジェイソン・リー
In The Cut  2003年 アメリカ映画
NYで大学の講師をしているフラニーは、特定の人としか交流を持たず、自分の殻に閉じこもることが多い。しかし、彼女の内なる情熱は日常の自分の周りに溢れる「言葉」や「ポエム」に変換されていた。そんなある日、彼女のアパートの庭で殺人事件の被害者の体の一部が見つかる。彼女の家に聞き込みに来た刑事に注目したフラニーは、あっという間に彼と関係を持ち、今まで彼女の内で蠢いていた「情熱」を開放してしまう。ずるずると、彼との関係を続ける日々が続く。しかし、彼女の周りでは連続して殺人事件が発生する。そして彼女がこよなく愛していた、彼女の義理の妹までが犯人の毒牙に。そして次の犯人の矛先はフラニーに向けられる・・・
私評:「この言葉のメモは何だい??」「私の情熱よ」・・・・ジェーン・カンピオンは「ある貴婦人の肖像」「ピアノレッスン」での、女性の心理を抉り出すような強烈な演出で有名ですが、今回血祭りにあげられた(笑)のはメグ・ライアン。彼女のヌードや、濃厚なベッドシーンばかりが先行して大きな噂になっていますね。しかし、今回メグが演じるフラニーは人間不信でありながらも、心のどこかで「人との交わり」を求めている寂しい女。今までのメグのキャラクターとは全然違うのですが、彼女は見事に演じきりました。もうひとつの見所はミステリーなのですが、フラニーの周りの人間が彼女の目線で描かれているせいか、どうも希薄なキャラが多く、ミステリーとしては面白くないかもしれません。(絶対に犯人は分からないでしょう・・)しかし、私にはこの映画のフラニーの心情はちょっと理解不可能なところも随所に・・・。また、フラニーとケイジのマロニの会話が官能小説のセリフみたいで、思わず退いてしまいました・・・。しかし、妹役で登場のジェニファー・ジェイソン・リーが良い演技を見せてくれます。男には分からない女性の感情なのでしょうか??
リング・ウィルス  監督:キム・ドンビン  出演:シン・ウンギョン、ペ・ドゥナ、チョン・ジニョン
Ring Virus  1999年 韓国映画
新聞記者ホン・ソンジュは姪の突然の死に戸惑っていた。そして彼女は姪が死んだ同じ日に3人の若者が死んだことに疑問を持ち始める。彼女らの死因が超現実的な力によるものだと主張した解剖医チェ・ヨルに助けを求めるが、彼に冷たくあしらわれる。ソンジュは疑問死の調査中、姪たちが訪れたというペンションで奇怪な映像のビデオ・テープを見てしまう。そして、テープは「お前は一週間後のこの時間に死ぬ」という文字が浮かんで終わる。恐怖のどん底に叩き落とされた彼女は再びチェ・ヨルを訪ねる。今度は彼も関心を寄せ、ビデオの内容を見てしまう。二人は手を組み、事件の解決に乗り出す。そして彼らはキム・ウンソという女性がこの事件に絡んでいることを突き止める。しかし、その最中ホン・ソンジュの一人娘が、このビデオを見てしまう・・・
私評:どうして私だけ助かったの??・・・日本のホラー映画の金字塔、「リング」の韓国版リメイクです。まあ、これといって目新しいところもないのですが、やはり「リング」は怖い作品ですよね。それにやはり劇場で見ると怖さ倍増です。先が分かっていても怖い!!しかし、日本版、アメリカ版に比べるとどうも作りが雑でした。主演の新聞記者を演じるのは「SSU」のシン・ウンギョン。彼女は美しいだけでなく、演技力もしっかりしているので、この役は良かったです。解剖医役はチョン・ジニョン。彼はどうもインパクトがなかった。そして日本版の山村貞子=キム・ウンソ役は「吠える犬は噛まない」で痛快な演技を見せたペ・ドゥナちゃん。なんと彼女のデビュー作だそうです!!
ミシェル・ヴァイヨン  監督:ルイ・パスカル・クヴレア  出演:サガモール・ステヴナン、ティアーヌ・クルージェ
Michel Vaillant  2003年 フランス映画
ル・マンを長年にわたり制してきたのは「ヴァイヨン」と「リーダー」という2つのレーシングチーム。近年は「リーダー」の撤退により「ヴァイヨン」チームの天下だった。中でも最高のドライバー、ミシェル・ヴァイヨンに敵はなかった。しかし、「リーダー」チームが次回のル・マンに名乗りを上げてきた。元の「リーダー」を率いたウォンの孫娘がチームを引き継いだのだ。彼女は勝つためには何でもする女。ル・マンに勝って、ヴァイヨンチームがひれ伏すのを見たいがために、あの手この手と巧みに罠を仕掛ける。そしてなんとミシェルの父親を誘拐し、レースに負けるよう強要する。果たしてレースの勝敗の行方は・・・・・
私評:レースを降りてもいけない、そして勝ってもいけない。屈辱を味わいなさい・・。日本でワールドプレミアが行われたこの作品。元々はヨーロッパで長年にわたり人気を誇っているコミックが原作です。それゆえレースの映像だけでなく、レーサーたちの友情、そして「悪党チーム」が仕掛ける数々の罠を乗り越えていく過程と、色々な方面から映画を楽しめます。ただ、レースシーンは「ドリヴン」の方が何倍も迫力があります。まあ、フランス映画なので、ちょっとお上品に作ってあるのかな??しかしながら、ホンモノのル・マンで撮影をしたシーンはやはりかなりの迫力です。脚本はフランス映画界にこの人アリ!のリュック・ベッソン。彼のネーム・バリューで売っているところがかなりあるでしょうね。監督はルイ=パスカル・グヴレア。彼はCM界でかなり有名らいしいです。主演はサガモール・ステヴナン。次回作はブラピと共演の「トロイ」。そしてめちゃめちゃ美人のディアーヌ・クルージェ!!まあ、あまり多くを期待せず、アクションを楽しむなら十分イケてる映画だと思います。今まで東京国際映画祭でワールド・プレミアとして上映された作品は「ラスト・エンペラー」と「タイタニック」。どちらもたくさんアカデミー賞を獲りましたが、このジンクツが続くでしょうか・・??(笑)


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